習慣化するための方法【論文から見る】
朝起きたらコーヒーを淹れたり、家に帰ったらテレビを見たり、考えてみると日常は習慣にあふれていますよね。
デューク大学の研究によると、なんと私たちの行動の約45%は習慣で成り立っているようです。
人の能力は習慣の積み重ねで、習慣から私たちは様々なものを得ています。
例えば筋トレを習慣化すれば良い体型を得ることができ、英語の勉強を習慣化したら海外で働くような全く別の人生に出会えるかもしれません。
これは1日頑張るだけでは得ることができないので、まさに習慣の力と言えるでしょう。
この記事ではそんな人の人生を左右する習慣をうまく扱う方法を、様々な論文を元にご紹介したいと思います。
習慣化できた状態ってどんな状態?
そもそも習慣になるってどういうことなんでしょうか?
人間は「よし、やるぞ!」と思ってやる作業と、自然と行ってしまう作業があります。
例えば役所の手続きなど「面倒だけど行かないとなー」と気合を入れて行う人も多いと思います。
一方で、歯磨きや入浴などは、「よし、やるぞ!」と踏ん切りをつけることなく、自然と毎日行ってる作業ではないでしょうか。
この歯磨きや入浴のような状態が、習慣化した行動になります。
つまり簡単に言ってしまえば、「やるぞ!」と気合を入れることなく、自然と行えるようになれば習慣化したと言えるわけですね。
意志の力を使わずにできるようになったら習慣化
この違いは何かと言うと、脳の中の前頭前野という箇所がコントロールしている意志の力を使っているかどうかです。
意志の力は使えば使うほど消耗していき、眠ることで回復します。
夜に暴飲暴食などダメな判断をしてしまいがちなのは、夜になると意志力が弱ってきてしまうからなんです。
意志の力は筋肉のように強化することはできるけど、あくまで有限です。
したがって1日の中で無駄なことに意志の力を消費してしまうと、大事なときに意志の力が使えなくなってしまうのです。
しかし習慣化さえしてしまえば、それは意志の力を使わずに行うことができるようになります。
なぜなら同じ行動を繰り返すことで脳の神経経路は活性化し、その行動を行いやすくなっていくからです。
脳神経は「英単語の勉強」のように、なんども繰り返し刺激を与えることで成長していくのです。
したがって意志の力を使って習慣化したい行動を継続して行い、意志の力を使わずにその行動を起こせるようにすることで習慣化することができる。
習慣化にオススメの時間は朝
習慣化には、意志の力が必要です。
そして意志の力は、朝に一番多く、夜になると減っていきます。
したがって習慣化したい行動は、朝行ってしまうのがベストなんです。
反対に仕事で疲れて帰ってきた後に、さらに意志の力を使って習慣化していくのは難しいということになります。
朝の時間を有効活用している成功者が多いのも、これが理由かもしれませんね。
習慣化のための方法
習慣化するまでの期間
ではどれくらいの期間を継続すれば、習慣化できるのでしょうか。
ロンドン大学が学生たち96人を対象に実験を行った結果、「18日〜254日」で習慣化ができるという結果になりました。
平均すると、66日だったそうです。
なぜこれだけばらけているかというと、習慣化したい行動の種類によってかかる時間が大きく異なるからだそうです。
例えば「毎日、水を飲む」といった簡単な行動であれば18日前後で習慣化できたそうです。
脳はゆっくりとした変化を好むため、あまりに急激な変化を伴う習慣を身に付けるのは非常に難しいのです。
- 習慣化するためには、平均66日の期間がかかる
- 簡単な行動ほど、短い時間で習慣化することができる
習慣化するために、行動を簡単にする
さて、簡単な行動ほど、早く習慣化できるというお話をしました。
そうなると、習慣化したい行動はできるだけ簡単にすると早く習慣化できるということになります。
たとえば英単語を毎日100個覚えよう、本を1日100ページ読もう、と高いハードルで習慣化しようとしていませんか?
これを、英単語を毎日1個覚えよう、本を1日1行読もう、と低いハードルに置きかえてしまいましょう。
するとより簡単に、習慣化することができるわけです。
そんなこと習慣にして、意味あるのって思うかもしれません。
ですが、まずはその行動を習慣化することが第一になります。
なぜなら習慣化できてさえしまえば、それを伸ばしていくのは簡単だからです。
したがって、「それで意味があるの?」というような小さな目標でも、まずはそれを習慣化してしまうのがより効果的なんです。
習慣化をサポートする、意志力を鍛える方法
習慣化には脳の前頭葉がコントロールする意志力が必要と先ほどお伝えしました。
その意志力は、様々な行動で鍛えることができます。
つまり、意志力を鍛える行動を習慣化してしまえば、より新しい行動を習慣化しやすくなるわけなんです。
というわけで、習慣化にオススメな意志力を鍛える行動を4つ挙げていきます。
運動する
最近の脳力向上の本に運動が書かれていないことはないというほど、運動は脳を鍛えるのに良い習慣になります。
脳に効果的な運動はどんなもの?
じゃあどんな運動が良いの?という話ですが、Northey JMらの研究[a]によると次のような結果になったそうです。
- どんな種類のエクササイズでも、認知機能は上がる(有酸素運動でも、筋トレでもOK)
- 時間は45分〜60分
- 太極拳のように負荷が低いエクササイズより、ジョギングぐらいの負荷の方が脳力は向上する
- 週のエクササイズ回数はそこまで影響はない。
「週1、なんでもいいから45分以上の運動をする習慣をつけましょう!」ということですね。
瞑想する
これも、特筆するまでもないくらい脳力向上に良いと言われているものですね。
Googleが2007年から瞑想プログラムを導入しているのも有名な話です。
- 1日20分の瞑想を週に4回やったら集中力が最大50%アップするという研究[b]
- 1日平均27分の瞑想を週に6回、8週間やったら海馬の灰白質密度がアップする研究[c]
など、瞑想が効果的なことを示す科学的なデータは無数に存在します。
もはや「しのごの言わずに瞑想しろ」という感じになってきてますね。
呼吸を減らす
「スタンフォードの自分を変える教室」によれば、呼吸と意志力は密接に関係しているそうです。
具体的には、「呼吸のペースを1分間に4回から6回に抑える」だけで意志力がアップするとのこと。
アメリカでは、警察官や証券トレーダー、顧客オペレーターなどにも取り上げられている技術だそうです。
睡眠をとる
6時間以下の睡眠は意志力を低下させてしまうそうです。
したがって、無理して徹夜を繰り返してしまうことは習慣化のためにも悪影響ということですね。
特に寝る時間が日によって異なると、体内のホルモンバランスが崩れ、不眠症をはじめとする様々な体調不良の原因になります。
規則正しく寝ることは、実はものすごく効果的な健康法なわけなんですね。
ストレスを減らす
ULCAとデューク大学の研究によると、人はストレスを抱えると良くも悪くも習慣化された行動に頼りやすくなるようです。
つまりいつもしていることをただ繰り返すだけになるのです。
これは新しい良い習慣を習得しづらくなるのももちろんですが、悪い習慣からストレスの連鎖に入りやすくなるということでもあります。
例えば休日はついダラダラ過ごしてしまうような人が、ストレスを抱えて会社をサボってしまったとしましょう。
そうするとサボってしまったという行為自体がストレスになり、さらにダラダラ過ごすという習慣を促進してしまうかもしれません。
しまいには次の日も、その次の日もサボってしまうことでしょう。
負のループに入ってしまい、ストレスから抜け出すことができなくなってしまうのです。
一方で運動などストレスを発散させる習慣があれば、その習慣からすぐに立ち直ることができるでしょう。
つまりストレス、余裕があるときにこそ良い習慣を身につけておくことが大事なのです。
まとめ:習慣化するための方法
習慣化とはなにかから習慣化の方法、そして意志力を鍛える方法まで説明していきました。
人の人生は、習慣が左右していると言っても過言ではありません。
英語を喋れるなどの能力は、ほとんど何かを継続することで達成できるものだからです。
ここに記載した習慣化の方法が、目標達成の助けになれば幸いです!
補足
途切れてしまっても大丈夫?
習慣化は脳神経の繋がりが強くなることによって促進されます。
脳神経はすぐには変わらないため、数日で習慣化できないのと同様に、数日行動しなかっただけで「元どおり」にはならないのです。
1日途切れてしまうことで自己嫌悪に陥ってチャレンジを辞めてしまう人も多いかもしれませんが、その程度で辞めてしまうのは非常にもったいないことなんですね。
モチベーションが大事なのでは?
何かするための意志の力は、モチベーションが高いほど少なくなるそうです。
したがって、モチベーションが高ければ習慣化しやすくなることは間違いありません。
しかしモチベーションは感情に基づいた不安定なもので、すぐに変動してしまいます。
例えば「英語を喋れるようになりたい」と思った次の日に「もっと痩せたい」という気持ちの方が強くなってしまうこともあるんじゃないでしょうか。
そうすると英語の勉強が定着する前に、運動を始めることになってしまいます。
3日坊主なんて言葉もありますが、モチベーションに頼った習慣化は、習慣化する前に終わってしまうことが多いんですね。
また狙い通りにモチベーションをあげることも難しいですよね。
「やる気出せ」と言われてすぐにやる気が出るのであれば、人生苦労しません。
もちろん習慣化するにあたりモチベーションが高いにこしたことはありません。
しかし習慣化のハードルを下げて、モチベーションがなくても習慣化できるようにすることの方が大事なのです。
意志力はどんな時に使われるの?
2010年に「自我消耗(意志力や自制心の低下)」について行われたメタ分析によると、原因の上位5つは以下の要素だったそうです。
- 努力
- 困難
- 不快さ
- 疲れたと感じること
- 血糖値の低下
そしてこれを解決するためには、
- モチベーションとなる刺激
- 自制心が必要となる課題を使った訓練
- ブドウ糖を補って血糖値をあげる
などがあるそうです。
新しい習慣を得るために必要な日数は21日という説もあるよ!
これは形成外科医のマクスウェル・マルツ博士の研究から生まれたものだそうです。
マルツ博士は手足の切断手術を受けた患者がその状態になれるまで21日かかると気づいたことから、「21日あれば新しい変化に慣れる」としたそうです。
参考
a: Exercise interventions for cognitive function in adults older than 50: a systematic review with meta-analysis.
b: Mindfulness meditation improves cognition: Evidence of brief mental training
c: https://news.harvard.edu/gazette/story/2011/01/eight-weeks-to-a-better-brain/